自動車業界ではCRMによってさまざまな課題解決が可能です。CRMシステムを早期から導入して営業や接客の課題を解決してきた事例もあります。この記事では自動車業界向けのCRMを業界全般の課題や導入事例から詳しくまとめました。CRMを活用するメリットについてもわかりやすく解説します。CRMを導入した効果を生かすツールとして有用なSMSについても、自動車業界ならではの活用例も含めて紹介するのでご活用ください。
自動車業界のCRM(顧客管理)とは?
自動車業界におけるCRMとは、顧客の情報をデータベースとして一元管理し、その情報をもとに顧客との関係を強化していく仕組みです。CRMシステムを活用することで、顧客ごとの属性や購入履歴、問い合わせ内容などを蓄積し、最適なタイミングで必要な情報や提案を届けることが可能になります。これにより、営業活動や売上拡大に直結するだけでなく、顧客満足度の向上にもつながります。
自動車業界では、自動車を販売して売上を伸ばすことが最も重要な課題です。買い替え時期を的確に捉えてオファーを行ったり、顧客の嗜好に合わせて魅力的な車を提案したりするためには、顧客理解が欠かせません。CRMによる情報管理は、そうした顧客ニーズを把握し、ビジネスチャンスを最大限に広げるための重要な取り組みといえます。
CRMが注目される背景と自動車業界の課題
自動車業界でCRMが注目されるようになったのは、業界が抱える課題を解決する有効な手段として期待されているからです。従来の営業手法や接客スタイルだけでは顧客のニーズを十分に捉えられなくなってきており、効率的かつ効果的な顧客管理の仕組みが求められています。
ここでは、自動車業界が直面している代表的な課題を整理し、CRMがどのように活用される背景につながっているのかを紹介します。
顧客情報が分散している
自動車業界では、顧客情報を一元管理できていないことが大きな課題です。ディーラーごとに情報を管理しているため、同じブランドであっても情報共有が進んでいません。その結果、営業活動や顧客フォローの妨げになっています。
データドリブンのDXが進む中で、情報が分散しているのは大きなデメリットです。顧客サービスを充実させたり、新しい自動車開発に役立てたりするためには、CRMによる情報の集約と活用が求められています。
アフターサービス市場の台頭で顧客が流動化する
車検専門会社やガソリンスタンドなど、アフターサービス市場が拡大したことで、顧客がディーラーに固定されにくくなっています。買取業者を利用する顧客も増え、最初に購入したメーカーで次も購入するとは限らなくなりました。
この流動化に対応するには、顧客フォローを強化して自社サービスを継続利用してもらう仕組みが必要です。CRMを活用すれば顧客データをもとに満足度を高め、他社へ流れるのを防ぐ施策を実行できます。
新車の代替期間が長期化している
自動車の性能向上や高額化により、買い替えサイクルは年々延びています。以前よりも顧客が長く同じ車に乗る傾向が強まり、メーカーやディーラーにとっては売上を上げにくい状況になっています。
そのため、数少ない買い替えのタイミングを的確に捉えることが重要です。CRMを導入すれば顧客の購買履歴や利用状況を把握でき、最適なタイミングでアプローチすることが可能になります。
顧客がインターネットで簡単に情報を手に入れられる
インターネットの普及により、顧客は店舗に足を運ばなくても車両情報を収集・比較できるようになりました。これにより、ディーラーの接点は減少し、他社に顧客を奪われやすくなっています。
CRMを活用すれば、オンラインでのフォローや個別提案を効率的に行うことができ、顧客が他社へ流れるリスクを減らせます。従来の店頭接客に加え、デジタルを活用した継続的なコミュニケーションが必要不可欠です。
自動車業界がCRMを導入するメリット
自動車業界がCRMを導入する主なメリットは、以下の6つです。
- 顧客情報を一元化できる
- 顧客対応を効率化できる
- 顧客ニーズの変化に柔軟に対応できる
- 顧客に合ったマーケティングができる
- 情報共有しやすくなる
- 必要な情報を迅速に検索できる
それぞれ詳しく解説します。
顧客情報を一元化できる
自動車業界でCRMを導入する大きなメリットのひとつが、顧客情報の一元管理です。顧客の氏名や購入履歴、問い合わせ内容などをシステム上で整理し、全従業員がリアルタイムで共有できるようになります。
これにより、新規顧客への提案では過去のデータをもとに具体的な提案が可能になり、顧客満足度の向上につながります。また、カスタマーサポートの現場でも迅速かつ的確な対応が実現できるため、顧客体験の質が高まり、企業への信頼感の向上にも直結します。
顧客対応を効率化できる
CRMは、顧客対応を効率化するための有力な仕組みです。顧客からの問い合わせに対して、購入履歴や過去のやり取りをシステム上で確認しながら対応できるため、スピーディーかつ的確な提案が可能になります。
新規顧客に対しても、既存のデータを活用することでより具体的なアプローチができ、効率的に信頼関係を築けます。
こうした効率化は、単に業務の手間を減らすだけでなく、企業の印象を良くし、顧客満足度の向上にも直結します。対応スピードや質の改善は競合との差別化にもつながり、選ばれる販売店としての強みを持つことができます。
顧客ニーズの変化に柔軟に対応できる
自動車業界においてCRMを活用する大きな強みは、顧客ニーズの変化に迅速かつ柔軟に対応できる点です。ライフスタイルや価値観の多様化により、顧客が求める車種やサービス内容は年々変化しています。
CRMに蓄積されたデータを分析すれば、年代や地域ごとの嗜好の傾向を把握することが可能です。また、家族構成や通勤距離といった基本的な情報を踏まえた提案を行うことで、顧客にとって最適かつ有益な選択肢を提示できます。
さらに、ライフステージや利用目的に応じて、メンテナンスプランや保険の見直しといった付加価値サービスを提案すれば、顧客満足度を一層高めることができます。
顧客に合ったマーケティングができる
CRMを活用すれば、顧客の属性や購入履歴に基づいた精度の高いマーケティングが可能になります。例えば、特定の車種を好む顧客に対して新型モデルの案内を送ったり、家族構成に応じてミニバンやSUVのキャンペーン情報を提供したりと、個別ニーズに合わせたアプローチが実現できます。
さらに、販売管理ソフトと連携すれば、在庫状況を踏まえたプロモーションも迅速に計画できます。これにより、在庫回転率の改善にもつながります。
こうした取り組みによって、マーケティングコストを抑えつつ、顧客満足度を高める効果的な施策を展開することができます。
情報共有しやすくなる
自動車業界でCRMを導入すると、営業担当者間での情報共有が格段にスムーズになります。顧客情報を一元管理できるため、担当者が変わった場合でもスムーズに引き継ぎができ、顧客対応の質が落ちるリスクを抑えられます。
また、過去の購入履歴やメンテナンス内容、問い合わせ履歴などを共有することで、より的確な提案やフォローが可能になります。さらに、車検や点検の時期を事前に把握し、CRMからリマインド通知を送れば、顧客との接点を増やすことができます。
こうしたタイムリーなコミュニケーションは、顧客の利便性を高めるだけでなく、競合他社への流出を防ぎ、長期的な関係構築にもつながります。
必要な情報を迅速に検索できる
CRMを導入すると、顧客対応に必要な情報を即座に検索できるようになります。顧客からの問い合わせに対して、過去のやり取りや購入履歴をすぐに確認できるため、的確でスピーディーな対応が可能です。
こうしたスムーズな対応は顧客に安心感と信頼感を与え、リピーターの増加や口コミによる新規顧客獲得にもつながります。結果として、顧客満足度の向上だけでなく、売上拡大にも直結する重要な要素となります。
CRMの導入は、単なるシステム投資ではなく、顧客情報を効率的に活用して競争力を高めるための戦略的な取り組みです。成長を目指す自動車販売店にとって、積極的に検討すべき施策といえるでしょう。
自動車業界がCRMを導入する際のポイント
自動車業界がCRMを導入する際のポイントとして、以下の3つを解説します。
- 顧客情報を分析しセグメントごとに対応する
- 顧客が積極的に情報を提供できる仕組みを整える
- 顧客情報を最大限に活用する戦略を立てる
それぞれ詳しく見ていきます。
顧客情報を分析しセグメントごとに対応する
CRMを導入すると、年齢や年収といった基本情報に加え、ライフスタイルや購買履歴などの多面的なデータを分析でき、顧客をセグメントごとに分類して適切に対応できます。
例えば、
- 郊外に住む共働き世帯で通勤距離が長い顧客には「燃費性能の高いハイブリッド車」を提案
- 趣味としてアウトドアを楽しむ顧客には「荷物を積みやすいSUV」や「4WDモデル」を紹介
- シニア層には「運転支援機能や安全装備を重視したコンパクトカー」をおすすめ
といったように、実際の生活スタイルや利用シーンを意識した具体的な提案が可能になります。CRMのデータ活用は、単なる顧客管理にとどまらず、販売戦略そのものの精度を高める効果があります。
顧客が積極的に情報を提供できる仕組みを整える
CRMの効果を最大限に発揮するためには、顧客が自ら進んで情報を提供したいと思える仕組みを作ることが重要です。アンケートやキャンペーンへの参加、会員登録、試乗予約といった機会にメリットを与えることで、顧客から自然に情報を収集できます。
さらに、会員登録時に新車情報やメンテナンス案内など有益な情報を提供すれば、顧客からの信頼を得られ、より正確で詳細なデータを集めやすくなります。
CRM活用を成功させるためには、単に情報を集めるのではなく、顧客にとって「情報を提供する価値がある」と感じてもらえる仕組み作りが欠かせません。
顧客情報を最大限に活用する戦略を立てる
CRMに蓄積された顧客情報は、マーケティング活動を強化するうえで非常に価値の高い資産です。購入履歴や興味・関心に基づいたターゲットメールの配信、パーソナライズされたウェブサイトでのコンテンツ表示、ダイレクトメールの送付など、さまざまな施策に活用できます。
ただし、情報を収集するだけでは十分ではありません。CRM導入後は、蓄積したデータを丁寧に分析し、顧客理解を深めることが求められます。顧客の行動パターンや嗜好を把握できれば、より効果的で成果につながるマーケティング戦略を立案できるでしょう。
自動車業界がCRMを導入する際の注意点
自動車業界でCRMを導入する際には、さまざまな課題やコストがともないます。
ここでは、CRM導入の注意点として以下の3つを解説します。
- 初期費用と運用費用の両方を考慮する
- すぐに効果が現れるわけではない
- データを分析しなければ意味がない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
初期費用と運用費用の両方を考慮する
CRMを導入する際には、初期費用と運用費用の両方を見込んでおく必要があります。初期費用には、ソフトウェアのライセンス料、導入に伴うハードウェアの準備、コンサルティングサービスなどの支出が含まれます。
導入後も、データ更新やシステムの保守・運用、従業員への教育といった費用が継続的に発生します。さらに、大規模なCRMシステムを導入する場合は、専任の担当者を配置する必要があり、人件費も加わります。
CRMの導入コストは、システムの規模や必要な機能によって大きく変動します。そのため、計画段階で自社の状況に応じた具体的な予算を慎重に立てることが重要です。
すぐに効果が現れるわけではない
CRMを導入したからといって、短期間で目に見える効果が出るとは限りません。顧客データを蓄積し、分析して活用するまでには一定の時間がかかるのが一般的です。さらに、CRMの効果を十分に引き出すためには、社内の業務プロセスや組織体制を見直す必要がある場合もあります。
また、従業員がCRMを正しく活用できるようになるためには、教育やトレーニングが欠かせません。こうした準備や習熟にはどうしても時間が必要となるため、短期的な成果を求めるのではなく、長期的な視点で継続的に改善に取り組む姿勢が重要です。
データを分析しなければ意味がない
CRMを導入する本来の目的は、単に顧客データを収集することではありません。重要なのは、収集したデータを活用して顧客との関係を強化し、最終的にビジネスの成長につなげることです。そのためには、データをどのように活用するのかを事前に明確にしておく必要があります。
例えば、顧客セグメントごとに異なるマーケティング施策を設計する、サービス改善のために顧客の声を分析する、営業活動の効率化に活かすなど、具体的な活用方法を想定しておくことが欠かせません。
収集したデータは、分析して可視化し、具体的なアクションにつなげて初めて意味を持ちます。データに基づいた意思決定を行うことで、顧客満足度の向上や売上拡大といった成果へと確実につなげることができるのです。
自動車業界におけるCRMの導入事例
自動車業界では、2010年代以降CRMの導入が本格的に進み、多くの企業が営業や顧客管理の強化に活用しています。課題解決のために導入したケースもあれば、IT活用やデジタル化の一環として取り入れたケースもあります。
ここでは、自動車業界での代表的なCRM導入事例を紹介し、どのような効果が得られたのかを見ていきましょう。
トヨタ・コニック・プロの事例
トヨタ自動車の子会社として2021年に設立されたトヨタ・コニック・プロは、CRMを積極的に活用し、Web接客の品質向上に成功しました。トヨタでは2017年からCRMシステム「KARTE」を導入し、Web接客体制を構築してきましたが、当初は「販売店のような接客」をオンラインで再現するには至っていませんでした。
そこでトヨタ・コニック・プロは、診断コンテンツやポップアップ、有人チャットなどを活用し、顧客一人ひとりに最適化された提案を行える仕組みを導入しました。CRMに基づいて顧客データを分析し、必要な情報を最適なタイミングで提示できるよう設計されています。
特に成果が顕著だったのが有人チャットです。オペレーターは販売店が蓄積してきた資料やノウハウをもとに接客を行い、その結果、チャット応対の顧客満足度は2020年の79%から2021年には91%へと大幅に改善しました。CRMを基盤にオンラインでも高品質な顧客体験を実現した代表的な成功事例といえます。
参照:自動車会社からモビリティカンパニーへの転換の中で、トヨタ自動車WEBサイトが目指す「対話型」のサイトの価値とは | CX Clip by KARTE
ダイハツ工業の事例
ダイハツ工業は、IT活用による営業力強化の一環としてCRMの導入を早期から進めてきました。Salesforceを見込み顧客管理システムとして採用し、2015年にはディーラー各社と連携する組織を設置して本格的な運用を開始しました。
特に注力したのが、高齢化によって需要拡大が見込まれる福祉車両の販売です。福祉・介護業界への法人営業を強化するため、カタログ請求や試乗予約、見積もり依頼、過去の購入履歴などをCRM上に集約し、見込み顧客の情報を一元的に管理できる仕組みを構築しました。
営業担当者はシステムに集まったデータをもとに効率的に見込み客を選定できるようになり、現場からはスマートフォンを使った音声入力によってリアルタイムで顧客情報を更新可能になりました。さらに、上司からの即時フィードバックが可能な体制を整えることで、営業活動のスピードと精度を大幅に向上させています。
自動車業界のCRM導入ならArchRise
自動車業界では、顧客情報の一元管理や営業効率の向上、アフターサービスの強化など、CRMを導入することで解決できる課題が数多くあります。しかし、導入を成功させるためには、システム選定や設計、現場に合わせた運用体制の構築が欠かせません。
ArchRiseは、自社でも自動車販売店を運営してきた経験を活かし、自動車業界特有の課題に即したCRM導入・運用を支援しています。現場目線に立った実践的なサポートを強みとし、システム導入だけでなく、運用の定着や成果につながる活用方法までトータルでご提案可能です。
「CRMを導入したいけれど、何から始めれば良いかわからない」
「自社に合った活用方法を知りたい」
そんなお悩みをお持ちの方は、ぜひArchRiseにご相談ください。貴社の課題に合わせた最適なCRM活用をご提案し、持続的な成長につなげるお手伝いをいたします。
まとめ
自動車業界におけるCRM導入の意義と現場適用の流れを、以下のように整理してきました:
- CRMが注目される背景として、顧客情報の分散・買い替えサイクルの長期化・情報取得のオンライン化など、業界が直面している明確な課題を提示。
- CRM導入によるメリットとして、情報の一元化や顧客対応の効率化、ニーズ変化への対応、顧客に合ったマーケティング、情報共有、迅速な情報検索、セグメント分析、顧客自発的な情報提供、戦略活用、高精度の施策立案、と全9項目にわたる恩恵をわかりやすく解説。
- 現実の導入事例では、ダイハツ工業やトヨタ・コニック・プロによるCRM活用の成功事例を通して、リアルな成果と運用のポイントを具体的に紹介。
CRMは単なるシステム導入ではなく、「顧客理解に基づいた戦略展開」を可能にするツールです。顧客との継続的で質の高い関係構築や、販売・アフターサービス力の強化、業務効率向上などを目指すなら、CRM導入は今や検討の枠を超えた必須課題となっています。