「広告運用って聞いたことはあるけど、実際には何をしているの?」「成果が出る仕組みがわからない…」と感じている方は多いのではないでしょうか。特にWeb広告は、日々新しい情報やツールが登場し、どこから手をつけていいか分からないという声をよく耳にします。
本記事では、広告運用の基本的な意味から始まり、具体的な作業内容、効果を最大化するコツまで、広告運用の全体像を網羅的に解説します。
広告運用を検討している経営者、マーケティング担当者、そして成果に伸び悩んでいる方に、参考にしていただきたい内容です。ぜひ最後までご覧ください。
広告運用の定義と役割
広告運用とは、インターネット上で配信される広告を「効果的に活用し、成果につなげる」ための一連の活動を指します。単に広告を出すだけでなく、広告を配信する目的やターゲット設定、クリエイティブの作成、入札調整、効果測定、改善といった継続的な作業が含まれます。
広告運用がビジネス成長に貢献する理由
広告運用を適切に行えば、見込み顧客の獲得、売上の向上、認知拡大など、事業成長の大きな武器となります。GoogleやSNS広告などは即効性も高く、小規模なテストから開始できるのが特長です。
広告運用者としての働き方の種類は?
広告運用を仕事とする者を「広告運用者」や「広告運用担当者」などと呼びます。ここでは、広告運用者の働き方の種類を3つに分けて解説します。

インハウス運用
事業を営む会社のマーケティング担当として、内部で広告を運用することを、インハウス運用と呼びます。自社の広告運用の成果を素早くキャッチできることできる反面、自社内で運用を行うため他社の情報をキャッチすることができず、比較ができないというデメリットもあります。
広告代理店勤務
次に、広告代理店勤務です。クライアントの代わりに広告運用を代行で行う働き方で、多くの場合掛け持ちでクライアントを担当するため、さまざまな業界の運用情報をキャッチすることができます。一方で、広告運用の上流の業務フローを把握しづらいというデメリットがあります。
フリーランス
フリーランスは、会社に属さず、個人でクライアントの広告運用を行う働き方です。自身に裁量があるため比較的自由に業務を調整することができますが、自分で積極的に動かなければ市場の流れや広告の最新情報などを獲得しづらいというデメリットがあります。
広告運用の具体的な流れと作業内容
広告運用は業務内容が多岐に渡ります。また、これといって決まった業務が決められているわけではなく、クライアントの売上に貢献するような業務はすべて運用者の仕事となります。ここでは、代表的な流れや仕事内容を紹介します。
広告配信を行う目的や課題の洗い出し
広告運用は、配信すること自体がゴールになってしまいがちですが、広告を配信することでどのような課題を解決したいのか、その先を明確にしておくことが重要です。広告運用者の意義は、ざっくり言うと、クライアントの悩みを解決することです。そのため、クライアントが抱えている課題をクリアにすることが最重要です。多くの場合、クライアントが考えている課題は、売上の拡大です。広告を配信する上で、どのような手段で売上拡大につなげるかの選択肢は無数にあります。だからこそ何からやれば良いのかが見えづらくなります。しかし、ここが曖昧なまま進めてしまうと、当初の目的や課題の解決につなげられないという自体を招いてしまいます。
調査・分析
広告配信の目的や課題が明確になったら、クライアントの所属する会社の現状について調査を行います。まずはクライアントが状況について理解していると思われるため、入念にヒアリングを行います。その後、自身でもクライアントの業界の特徴や競合他社の情報などを綿密に調べることが重要です。
クライアントが扱う商品やサービスについての理解も非常に重要です。「クライアントの商品の特徴は分からないけどとりあえず広告を出す」では成果は得られません。どのような強みがあり、他社と比較してどのような立ち位置にいるのかなどを理解した上で広告運用を行わなければ、効果的なマーケティング・運用を行うことはできません。
また、市場環境についての理解も重要です。
商品・サービスを理解する
まずは、クライアントが扱う商品やサービスについての調査をおこないます。クライアントへのヒアリングが主となるため、情報が最も集めやすいです。
また、クライアントがどのような商品やサービスを扱っているのか以外にも、現在ターゲットとしている市場や、業界内での売上規模などに関して、ヒアリングを基に情報を収集します。
なお、ヒアリングを行う前には、あらかじめクライアント企業のHPなどで内容を確認した上で臨むことが重要です。クライアントのHPを確認した後は、Webサイト上で商品やサービスについて、そして競合他社の情報も確認します。
「ヒアリングで情報を集めればいい」と思っていると、クライアントから「この人全然うちの企業のこと調べてないな」と不信感を抱かれてしまいますので注意が必要です。また、事前に情報をインプットした上でヒアリングを行うと、ヒアリングで得られる情報の質が上がり、結果的に成果につながりやすくなります。
クライアントへヒアリングを行う際には、以下の内容をヒアリングすることをおすすめします。
●広告を出したい商材やメニュー
●広告を出すサイトの URL
●商材やメニューの特徴
●気になる競合
●商材やメニューについての市場などを含めた最近の動向
●広告出稿にあたっての予算感
ヒアリング前に調べているであろう情報もありますが、こちらは念の為の確認として再度ヒアリング時に伺い、認識を擦り合わせることをおすすめします。
ヒアリングでキャッチした情報はドキュメントやExcel、スプレッドシートなどにまとめておくことで、後ほどすぐに見返すことができます。
市場や競合の調査・分析
商品・サービスについて調査したら、次は市場や競合状態などといった「市場環境」の調査・分析を実施します。
一般的に市場環境分析というと以下の手法が存在します。
●PEST分析
●3C分析
●SWOT分析
●STP分析
これら以外にも分析手法はありますが、ここではこの4つの分析手法について解説します。
Pest分析
PEST分析は、外部の環境を分野別に評価する分析手法です。「PEST」とは以下の頭文字をとったものです。
・政治(Politics)…消費税率、規制の強化・緩和など
・経済(Economy)…景気動向、市場の成長、金利など
・社会(Society)…少子高齢化、ライフスタイルの変化、流行など
・技術(Technology)…最新の技術動向など
例えば、少し前はコロナの感染拡大という深刻な社会要因が多くの企業に影響を与え、人々の生活が一変したことに伴い、社会経済の形も変化しました。また、最近は物価高の影響がさまざまな分野に顕著にあらわれています。
このような、企業がコントロールすることができない外部環境の変化を迅速にキャッチし、事業戦略に反映させることが重要です。
ちなみに近年は、環境(Ecology)の要素を追加して「PESTE」分析と呼ばれることもあります。
3C分析
3C分析は、企業を取り巻く環境を分析するフレームワークのことを指します。3Cとは以下の3つの指標を指します。
・顧客(Customer)…顧客のニーズ、マーケットの規模など
・競合(Competitor)…競合他社の状況、参入障壁の高さなど
・自社(Company)…自社の資金力・生産能力・リソースなど
なお、これら3つのうちCustomer、Competitorは外部要因、Companyは内部要因です。3Cそれぞれの環境要因を分析して、事業を評価します。これら3つの視点から分析を行うことで、自社の強みや弱みが何なのかを明確化し、顧客ニーズがどのようなものなのかが分かります。つまり、ターゲットとしている市場の中で自社が成果を出していくための手がかりを見つけることができる手法がこの3C分析です。
SWOT分析
SWOT分析とは、経営戦略を練るために、内部環境と外部環境のプラスとマイナスを洗い出す手法です。
「SWOT」とは、以下の4つの要素から成り立っています。
・S:強み(Strength)…自社や自社製品・サービスの強み
・W:弱み(Weakness)…自社や自社製品・サービスの弱み
・O:機会(Opportunity)…自社や自社製品・サービスが成果を出せる外部環境の要素
・T:脅威(Threat)…自社や自社製品・サービスが成果を出せなくなる外部環境の要素
これらの指標を用いることで、自社の現状を客観的に把握することができます。
先ほどのPEST 分析、3C 分析で得られた情報をもとに、クライアントの強みと弱みを分析し、外部環境の状況を整理します。次に機会、脅威という順番で分析を進めていきま
STP分析
STP分析は、市場のニーズを把握し、ターゲットとするべき市場やアプローチの方法、競合他社との差別化が分かります。STPは以下の3つの言葉の頭文字から名付けられています。
・Segmentation(セグメンテーション)
・Targeting(ターゲティング)
・Positioning(ポジショニング)
STP分析を行う際には、年齢や性別、地域といった項目で市場を分類し、その中でターゲットとするべき領域を決定します。その後、先ほど解説したPEST分析、3C分析、SWOT分析で洗い出した情報を基に、ターゲットとする領域の中で有利となる立ち位置を明確化します。
キャンペーン設計とターゲット設定
広告配信の目的が明確になり、商品や市場の特徴を理解したら、次に行うのはターゲティングの設計です。「どのような人に商品・サービスを届けたいか」「どのような人に広告を出せば成果に繋がりやすいか」をイメージし、それをもとに、広告配信を行う媒体やターゲティングの方法を決定します。
ちなみに、幅広い層を狙いたい場合は Google広告を選び、ニーズが明確にあるユーザー層(顕在層)へ配信を行うなら検索連動型広告を選択するのがオススメです。もし Google広告の検索連動型広告で成果が出た場合は、Yahoo! 広告の検索連動型広告を並行して配信することを検討するのも一つの手段です。
また、画像や動画でユーザーに広告を表示したい場合には、SNS 広告やディスプレイ広告といった種類を活用するのもオススメです。
Google 広告、Yahoo! 広告、など、広告を配信する媒体ごとに、広告の表示面は異なります。さらに、その媒体を利用しているユーザーの年齢層や性別、職種なども異なります。
そのため、先ほど紹介した分析手法を活用して、どの媒体で広告を出せば成果につながりやすいのかを明確にした上で、広告の配信媒体を決定しましょう。もちろん、必要に応じて複数の媒体で配信するのも良いでしょう。媒体が決まれば、アカウントを開設して広告の作成に進みます。
(参考)
リスティング広告のターゲティングとは?種類やディスプレイ広告との違いを解説
GoogleとYahoo!のリスティング広告に関して徹底解説!違いについても徹底比較
キーワード選定と広告文の作成
リスティング広告であれば、ユーザーが検索しそうなキーワードを調査し、ニーズに合った広告文を作成します。クリックされるためには、訴求力のある見出しと説明文が重要です。
リスティング広告における成功の鍵は、「ユーザーの検索意図に合致したキーワードを見つけること」と「魅力的な広告文を作成すること」にあります。たとえば、自社サービスが「中小企業向けの会計ソフト」であれば、「会計ソフト 中小企業」「会計ソフト 初心者」などの検索語句が考えられます。
キーワードは「ビッグワード」「スモールワード」「ロングテールキーワード」といった分類ができ、広告主は目的に応じてそれらを使い分ける必要があります。また、検索意図の異なるキーワードごとに異なる広告文を作成することが理想です。
広告文には見出しと説明文があります。クリックを促すには、「今だけ無料体験」「限定キャンペーン中」など、ユーザーにとってのメリットを明確に示すことが重要です。単にサービスを説明するのではなく、「ユーザーが抱える悩みをどう解決するか」にフォーカスすることで、訴求力の高い広告に仕上がります。
入札管理と予算の設定
入札単価を調整することで広告の表示順位やクリック数をコントロールできます。しかし、広告予算は限られており、すべてのキーワードに均等に配分するわけにはいきません。そのため、「どのキーワードにどのくらいの予算を投下するか」という入札管理が非常に重要になります。
具体的には、成果(CV)が出やすいキーワードには高めの入札を行い、逆に成果が出にくいキーワードには低めに抑える、または一時的に停止するといった運用が求められます。また、曜日や時間帯、地域別のパフォーマンスにも注目し、効果の高いセグメントには積極的に予算を集中させるといった戦略的な調整も必要です。
また、広告を配信する予算をいくらに設定するかも重要です。この予算を柔軟に見直すことで、限られた広告費の中で最大限の成果を上げることが可能になります。
計測タグの作成
広告運用において成果を正確に把握するためには、計測タグの設置が不可欠です。クリック数やコンバージョン数(CV)などの基本的な指標をはじめ、ユーザーの行動を可視化することで、広告の改善点を具体的に特定できます。計測タグを正しく設定しなければ、効果測定ができず、無駄な広告費を使い続けてしまう恐れがあります。
Google広告で代表的なタグには、Googleタグマネージャーがあります。GTMは複数のタグを一元管理できます。
タグを作成・設置する際は、以下のような点に注意する必要があります。
・計測したいアクション(例:購入、問い合わせ、資料請求)を明確にする
・CV地点(例:サンクスページ)に正しく設置されているか確認する
・設置後は、Google広告の診断ツールやリアルタイムプレビューで動作確認を行う
・複数の広告媒体を使っている場合は、それぞれの媒体ごとに専用のタグを導入する
タグを設定して終わりではなく、ちゃんと動作するかをチェックしましょう。GTMのプレビューから動作確認を行うことができます。
また、定期的に「正しくCVが取れているか」「不要なイベントが記録されていないか」などのチェックを行うことも重要です。
広告のパフォーマンスを正確に判断するためにも、計測タグの作成と管理は必ず行いましょう。
配信後のデータ分析と改善PDCA
広告を配信した後は、必ず「その結果がどうだったか」を分析し、次の改善アクションにつなげることが重要です。いわゆるPDCAサイクルをしっかり回すことで、広告の精度と効果は大きく高まっていきます。
・クリック率(CTR)
・コンバージョン率(CVR)
・平均クリック単価(CPC)
・広告のインプレッションシェア
これらのデータから「どの広告がよくクリックされているか」「どのキーワードで成約が多いか」などを把握します。
そのうえで、広告文を変更したり、ターゲティングを見直す、LPを修正する、無駄なキーワードを除外する、などの改善施策を講じ、再び配信結果を分析します。この繰り返しにより、広告効果は徐々に最適化されていきます。
(参考)
リスティング広告の分析方法を解説!効果改善のポイントやツールも紹介
広告運用で成果を出すための重要なポイント
ここまでで、クライアントの状況を分析し、それを基に媒体やターゲットを選択し、広告を出稿する流れについて解説しました。しかし、広告を運用を行うことはできても、そこで成果を出すのは簡単ではありません。
ここでは、広告運用でしっかりと成果を出すために必要なポイントについて解説します。
ゴールから逆算して運用する
広告運用では、まず最終的に何を成果とするか、いわゆるコンバージョン地点を明確にし、そのゴールから逆算して戦略を構築する必要があります。たとえば、成果地点が「資料請求」であれば、今すぐ検討フェーズにあるユーザーをターゲットにすべきであり、「認知拡大」を目的とした広いターゲティングは適切ではありません。そのため、広告文の訴求、キーワードの選定、媒体の使い分けもすべて、「最終目的から逆算して設計する」ことが軸になります。
さらに、CVには、「商品の購入」や「問い合わせフォームの送信」「無料トライアルの申込」など、さまざまなタイプがあります。そのため、どのCVを獲得したいのか、また、それを実現するためにはどのような広告を出すのが良いのかを考えた上で広告運用を行う必要があります。
「とりあえず配信」ではなく、「ゴールからの逆算設計」を行うことで成果の出やすい広告運用が可能になります。
ターゲティング精度と広告配信面を最適化する
広告の成果は、どれだけ見込みのあるユーザーにリーチできるかに大きく左右されます。そのため、広告の配信面やターゲティング設定は、定期的に見直す必要があります。たとえば、過去の配信データから「25〜34歳の女性」の反応が良いことがわかれば、その層に向けて広告文を調整したり、配信予算を厚くしたりすることで、より効率的にCVを獲得できます。また、検索広告では、検索キーワードの成果ごとに除外キーワードや入札単価の調整を行うことも重要です。成果に結びつかないキーワードは排除し、費用対効果の良いキーワードに集中させていく運用が求められます。
クリエイティブを継続的にテストする
ディスプレイ広告を配信する場合において、広告文やバナー、動画などのクリエイティブは、ユーザーの目に最初に触れる重要な要素です。成果を出すためには、訴求軸を変えた複数パターンのクリエイティブを用意し、どのパターンがもっとも効果的かをテストすることが欠かせません。たとえば、「料金の安さ」を訴求したバナーと「サービスの品質」を訴求したバナーでは、反応する層が異なる可能性があります。ABテストを行うことで、実際の数値から最適な訴求軸を見極め、勝ちパターンを構築していくことができます。
また、クリエイティブは一度成果が出たとしても、長期間使用していると効果が落ちる「クリエイティブ疲労」が発生します。そのため、継続的な更新・刷新も視野に入れて運用していくことが重要です。
配信タイミングを見直す
広告が配信されるタイミングも、成果に大きく影響します。ユーザーの行動時間や曜日別の傾向を分析し、反応の良い時間帯・曜日に集中して配信することで、無駄なインプレッションやクリックを削減し、効率の良い広告運用が可能になります。例えば、BtoB商材であれば平日の昼間の成果が高く、土日は反応が鈍くなる傾向が見られることが多いため、週末の配信を抑えるだけでも成果が改善されるケースがあります。
広告管理画面では、時間帯・曜日別の成果データを取得できますので、そこから傾向を読み取り、配信スケジュールを調整していくことが成果向上に直結します。
株式会社ArchRiseは広告運用に対応しています。
株式会社ArchRiseは、広告運用に関して豊富な実績を有しています。また、リスティング広告の他にも、SEO対策やSNS広告、コンテンツマーケティングなど多岐にわたるWebマーケティングサービスを提供しています。豊富な実績とデータに基づいた最適な運用で、クライアント、企業の目標達成を弊社が全力で支援します。
ご相談は無料ですので、興味があればぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ
広告運用は、単に広告を出す作業ではなく、「戦略を立て、継続的に改善し、成果につなげる」ことが求められます。事前に広告を配信する目的や会社の強み・弱みを分析し、どのようなターゲットに広告を配信するかを明確にした上で、成果の出やすい媒体やキーワードで配信する必要があります。また、配信した後もその成果を定期的に分析し、改善のPDCAを常に回していくことが重要です。
本記事で紹介した視点をもとに広告運用のノウハウを身につけ、自分の目標を達成する手がかりにしてみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました!