リスティング広告の効果を最大化したい方にとって、最初に向き合うべき重要テーマが アカウント構成 です。
アカウント構成とは、キャンペーン・広告グループ・広告・キーワードなどの要素をどのように配置し、どのように整理するかを決める「広告運用の設計図」のような存在です。
良いアカウント構成は、適切なユーザーに予算を集中させ、成果を効率的に積み上げるための土台になります。
一方で、構成が不十分だと効果が安定しなかったり、管理に無駄な工数がかかったりと、多くの不利益を招きます。
アカウント構成が難しいと感じる理由は、業種・商材・ユーザーの検討度によって最適解が変わるうえ、Googleが推奨する「Hagakure構成」のような特性も理解しながら組み立てる必要があるためです。
そのため、「どこから手をつければいいかわからない」「作ってみたものの正しい構成になっているか不安」という方も少なくありません。
この記事では、
- アカウント構成の基本
- 良い構成をつくるための3つのポイント
- 迷わず実践できる作成ステップ
を初心者でも理解しやすい形でまとめています。
結論として、まずは “ターゲットの検討度ごとに構成を分け、Hagakure構成をベースにする” ことが、幅広い業種で効果を出しやすい実践的な方法です。
これは私自身が運用代行をする際にも標準としているアプローチで、多くの商材で非常に再現性があります。
アカウント構成は戦略そのものであり、土台である構成が間違っていれば、その後どれだけ調整しても成果は伸びにくくなります。
この記事を読むことで、最初の一歩から「成果の出る構成」を迷わず作れるようになりますので、ぜひ参考にしてください。
リスティング広告のアカウント構成が重要な理由とは?
リスティング広告では、アカウント構成の最適化が成果に大きく影響します。
ここでいう最適化とは、キャンペーン・広告グループ・キーワードなどの配置を戦略的に整理し、データの集約・分析・改善をしやすくすることです。構造が整っていないアカウントは、成果の出る広告に十分な予算を割けなかったり、改善ポイントを正しく把握できなかったりと、運用効率が大きく低下します。
アカウント構成が重要である主な理由は以下の3点です。
効果が出やすい広告に対して予算を集中させられる
構成が適切に整理されていると、キャンペーン単位・広告グループ単位で
- クリック数
- コンバージョン率
- CPA
- ROAS
などの指標を正しく把握できます。
これにより、成果が出ている領域へ予算を優先的に配分でき、逆に成果の低い領域への無駄な支出を抑えることができます。
たとえば、CV獲得数が多いキャンペーンに予算を集中させれば全体の獲得効率は自然と上がります。
CPAが高くなっているキャンペーンを早期に見つけて予算を抑えれば、余計なコストをかけずに成果を最大化できます。
アカウント構成の最適化は、その“選択と集中”を正確に行うための前提条件と言えるでしょう。
データの蓄積を早め、自動入札の精度を高められる
リスティング広告の自動入札戦略(tCPA、tROAS など)は、過去のインプレッションデータやクリックデータをもとに最適な入札額をリアルタイムで決定します。
アカウント構成が整理されていれば、データが正しく集約され、アルゴリズムが学習しやすくなります。
逆に、構成が複雑すぎたり、意図しないキーワードが混在していたりすると、学習データの質が下がり、自動入札の精度が十分に発揮できません。
構造が整っているアカウントは
- データ収集が速い
- 学習が安定する
- 過剰入札やムダクリックが減る
ため、広告費の効率改善(ROI 向上)につながります。
広告管理がしやすくなり、運用のミスや工数を削減できる
アカウント構成が明確で一貫性があると、広告全体のパフォーマンスを直感的に把握できます。
どのキャンペーンが何の目的で作られているか、どの広告グループがどのキーワードを担当しているかが明確なため、改善点の発見も迅速です。
また、複数人で広告運用する場合にも大きなメリットがあります。
整理されたアカウントは担当者間の認識ズレを防ぎ、誰が見ても同じ判断ができる「共有しやすい状態」になっています。結果として、人的ミスの減少・作業工数の削減にもつながります。
アカウント構成は単なる“設定の仕方”ではなく、
「成果を出すための運用基盤をつくる工程」だと言えます。
リスティング広告のアカウントを構成する5つの基本パーツ
リスティング広告のアカウントは、いくつかのパーツ(コンポーネント)が階層構造で組み合わさることで成り立っています。
それぞれの役割を理解しておくことで、後ほど解説するアカウント構成や設計の理解がスムーズになり、効率的な運用にもつながります。
以下がアカウントを構成する主要な5つのパーツです。
| パーツ(コンポーネント) | 主な役割 |
|---|---|
| アカウント | 原則として「1企業につき1アカウント」を作成する単位 |
| キャンペーン | 予算・配信地域・入札戦略など、広告全体の方針を設定する階層 |
| 広告グループ | 広告とキーワードをまとめ、テーマごとに整理するための単位 |
| 広告 | ユーザーに実際に配信されるテキスト広告やリンク先URLを設定 |
| キーワード | どの検索語句に対して広告を表示するかを決める要素 |
これらのパーツが組み合わさり、リスティング広告のアカウントは構成されています。
Google広告・Yahoo!広告ともに同じ考え方で、アカウント → キャンペーン → 広告グループ → 広告・キーワード の順に階層が深くなります。
また、同じ項目を複数階層で設定できる場合、より下層の設定が優先される というルールがあります。
たとえばキャンペーンと広告グループの両方で入札調整が可能ですが、広告グループ側の設定が優先されるといった仕組みです。
本記事では、これら5つのパーツをGoogle広告の管理画面キャプチャとともにひとつずつ詳しく解説していきます。
なお、導入しやすいよう「アカウント」も構成パーツの1つとして扱いながら説明します。
アカウント
アカウントはリスティング広告における最上位の階層です。原則として「1企業につき1アカウント」を作成すれば問題ありません。企業名をアカウント名に設定しておくと、管理面でもわかりやすく運用しやすくなります。
ただし、同じ企業内でも 事業が複数あり、かつリンク先ドメインが異なる場合 は、アカウントを分けた方がデータの混在を防げるためおすすめです。ドメインが異なるとユーザー層やコンバージョン経路も変わるため、同一アカウント内にまとめてしまうと分析がしづらくなるためです。
例:アカウントを分けた方がよいケース
- EC事業サイト:abc.com
- 広告運用代行サイト:efg.com
| 設定項目 | 内容 |
|---|---|
| 支払い設定 | 広告費の支払い方法(クレジット・請求書など)を登録 |
| ログイン情報 | 管理に使用するメールアドレス・パスワードの設定 |
キャンペーン
キャンペーンは、配下の広告グループをまとめる「大きな箱」にあたる階層です。ここでは予算配分や配信地域といった運用方針の設定ができるため、最も戦略が反映される重要なパートです。
特に 日予算と配信地域 の設定は、「選択と集中」を行う上で欠かせない要素です。ここが曖昧だと、狙うべきユーザーに十分な予算が割かれず、成果の頭打ちを招くことがあります。
キャンペーンで設定できること
| 設定項目 | 内容 |
|---|---|
| 日予算 | 1日に使用する予算を設定 |
| 配信地域 | 広告をどの地域に配信するかを設定 |
| 配信スケジュール | 曜日・時間帯・開始日・終了日の設定 |
| 配信方式 | 検索・ディスプレイなど広告メニューを選択 |
| 除外キーワード | 表示したくない検索語句を除外 |
| 入札戦略 | 手動入札 or 自動入札を選択 |
| 配信デバイス | スマホ・PC・タブレットの配信制御 |
| 広告表示オプション | サイトリンクなど追加情報の設定 |
| 属性ターゲティング | 年代・性別などユーザー属性の調整 |
広告グループ
広告グループは、キーワードと広告をまとめる中間階層です。キャンペーンの下に複数作成でき、サイト内のテーマごとに分類する のが基本です。
ただし、細かく分割しすぎるとデータが分散し、学習が進みにくくなるため注意が必要です。「必要なテーマ分割」「最低限の粒度」が理想です。
| 設定項目 | 内容 |
|---|---|
| 入札価格 | 広告グループ内キーワードの入札価格 |
| 配信デバイス | どのデバイスに配信するか |
| 広告表示オプション | 各種オプション設定 |
| 属性ターゲティング | 年代・性別などユーザー属性 |
キーワード
キーワードは、「どの検索語句に広告を表示させるか」を定める最重要パーツです。広告グループ内に登録します。
キーワード設定にミスがあると、狙っていないユーザーに広告が配信されるなどの問題が起きやすくなります。運用段階で調整はできますが、できる限り最初の構成段階で正しく設計しておくことが理想です。
| 設定項目 | 内容 |
|---|---|
| キーワード | 登録する検索語句 |
| 入札価格 | 手動入札時に設定。自動入札の場合は不可 |
| マッチタイプ | 部分一致/フレーズ一致/完全一致 |
| リンク先URL | キーワード単位で遷移先設定(任意) |
広告
広告は、ユーザーに実際に表示されるクリエイティブです。広告グループの中に最大3つまで設定できますが、機械学習を早めたい場合は 基本1つに絞る のが推奨です。
構成次第でCTRやCVRが大きく変わるため、運用段階で調整できるとはいえ、初期構成の段階から価値提供を意識して設計しましょう。
| 設定項目 | 内容 |
|---|---|
| 見出し | 最も目立つ広告タイトル |
| 説明文 | 追加情報を伝えるテキスト |
| リンク先 | 広告クリック後に遷移するページ |
| パス | 表示URLのカスタム要素 |
広告文の具体的な作り方については別記事「リスティング広告のコンバージョンが増える広告文の作り方」で詳しく解説しています。
アカウント構成を作る5つの手順
リスティング広告のアカウント構成は、以下の手順に沿って設計していきます。
- キーワード選定とグループ設計を行う
- マッチタイプを決める
- 広告グループを作成する
- キャンペーンの設定を行う
- 広告文を作成する
ここからは、それぞれのステップについて解説します。
ステップ1:キーワード選定とグループ設計を行う
まず最初に行うべきは「どのユーザーを狙うのか」を明確にし、そのうえで検索キーワードを選定することです。
ユーザーは一般的に、以下のような検討度の異なる3つの層に分類できます。
- 指名層(今すぐ問い合わせ・購入したい層)
- 顕在層(課題認識が明確で、比較検討中の層)
- 潜在層(課題はあるが、具体的なサービスを探していない層)
この層ごとにCVに繋がりやすいキーワードを選んでいきます。層を分けて考えることで、配信目的に合った構成ができ、予算配分の軸もブレにくくなります。
次に、選んだキーワードを「意味的に関連性が高いもの同士」でグループ化します。
同じテーマのキーワードをまとめることで、広告との関連度が高まり、品質スコアの向上やクリック率改善にもつながります。
キーワード選定で最も重要なのは、ユーザーの検索意図を正しく理解すること です。
ユーザーがどのような課題を持ち、何を解決したくて検索しているのかを読み取り、その意図に対応したキーワードを選ぶことで、より高いコンバージョン率が期待できます。
キーワード選定の詳細は、以下の記事でより深く解説していますので参考にしてください。

ステップ2:マッチタイプを決める
キーワードを選定したら、次に「どの検索語句で広告を表示させるか」を決める マッチタイプの設定 を行います。
マッチタイプとは、登録したキーワードと実際の検索語句の“ズレ”をどの程度許容するかを指定する機能で、ここを正しく設定することで無駄なクリックや不要な配信を抑え、広告効果を最大化できます。
Google広告で使えるマッチタイプは、以下の3種類です。
- 完全一致
キーワードと「同じ意味または意図を持つ検索」にのみ広告が表示されます。
意図しない配信を防ぎやすく、精度の高い配信が可能。 - フレーズ一致
指定したキーワードと同じ意味を含む検索語句に広告が表示されます。
完全一致より範囲は広いものの、関連性は高いまま維持しやすい設定です。 - 部分一致
登録したキーワードと関連性のある幅広い検索に広告が表示されます。
新しいニーズの発見やトラフィック拡大には有効ですが、その分精度管理が重要になります。
マッチタイプを適切に使い分けることで、
- 無駄なクリックを抑え
- CVに繋がりやすい検索だけに集中し
- 予算消化を最適化する
という、運用の土台を整えることができます。
3つのマッチタイプごとの詳しい特徴や使い分けについては、以下の記事でより詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

ステップ3:広告グループを作成する
広告グループは、選定したキーワードを“テーマごと”に整理し、それぞれに最適な広告を紐づけるための単位です。
まずは、事前に選定したキーワードをもとに、検索意図や商品カテゴリごとに広告グループへ分けていきます。
次に、各広告グループに対応した広告を設定します。
広告グループ内のキーワードと広告文の内容が一致しているほど、ユーザーの意図に沿った配信が可能になり、品質スコアの向上やクリック率の改善にもつながります。
また、広告グループ単位で入札戦略や入札価格を調整できるため、
「CVに近いキーワードを含むグループには高めの入札を設定する」
といった配分も行いやすくなります。
広告グループを適切に設計できると、配信精度が高まり、成果の改善につながります。
ステップ4:キャンペーンの設定を行う
広告グループの設計ができたら、次はキャンペーンの設定を行います。
キャンペーンは、広告配信の方針や予算を決める最も重要な階層です。最初に 「キャンペーンの目的」 を定めるところから始めましょう。
- ウェブサイトへのアクセスを増やしたい
- 商品購入や申込みを増やしたい
- ブランド認知を広げたい
目的に応じて、入札戦略や配信方式を選択することで、広告効果は大きく変わります。
さらに、コンバージョンに繋がりやすいキーワードは、ほかのキーワードと同じキャンペーンにまとめず 独立したキャンペーン として構成するのが効果的です。
例えば、
- 商品名をそのまま含むキーワード
- 競合比較系のキーワード
- 検討が進んでいることが分かる検索語句
などは、購入意欲が高いユーザーが多いため、単独のキャンペーンとして予算を優先的に配分します。
これにより、成果の出る領域に予算を集中しやすくなり、CV数の最大化につながります。
ステップ5:広告文を作成する
最後の工程では、広告グループごとにユーザーのニーズに応える広告文を作成します。
ここまで設定してきたキーワードやテーマを踏まえ、ユーザーが求める情報に対して「この広告が最も役に立ちそうだ」と感じてもらえる表現にすることが重要です。
広告文を作成する際の基本は、広告グループ内で設定したキーワードを広告文に反映させること です。
キーワードと広告文の関連性が高いほど、品質スコアが向上し、クリック率やコンバージョン率の改善にもつながります。
例えば、オンライン英会話サービスを扱う広告グループであれば、
- 「オンライン英会話 初心者向け」
- 「短期 上達 英会話」
といったキーワードに合わせ、 - 「初心者でも始めやすいオンライン英会話」
- 「短期間で会話力を伸ばしたい方におすすめ」
といった訴求を盛り込むことでユーザーの意図とマッチしやすくなります。
同様に、宅配クリーニングサービスを扱う広告グループなら、
- 「布団クリーニング 宅配」
- 「衣類クリーニング 即日発送」
といったキーワードに対し、 - 「布団を送るだけで完結する宅配クリーニング」
- 「忙しい方向けの即日発送クリーニング」
といった価値を明確に伝える広告文が効果的です。
このように、設定したキーワードの意図に沿って広告文を作成すること で、ユーザーにとって関連性の高い広告となり、成果につながりやすくなります。
広告文の具体的な作り方や改善テクニックについては、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。

リスティング広告のキーワード選定・設定における注意点
リスティング広告では、キーワードの選び方ひとつで成果が大きく変わります。
ここでは キーワード選定・設定時に特に注意すべき3つのポイント を解説します。
検索意図(インテント)が同じキーワードを重複して登録しない
異なる表現でも、ユーザーの検索意図が同じ場合は1つのキーワードに集約しましょう。
重複登録してしまうと、以下のようなデメリットが生じます。
- 同じ意図のキーワードに広告が分散し、データが集まりづらくなる
- 自社広告同士が競り合い CPC(クリック単価)が上がる
- 自動入札の学習効率が低下する
例(※新しい例に変更済み)
- 「一眼カメラ 初心者向け」
- 「初心者 一眼レフ おすすめ」
表現は違っても “初心者がカメラを探している” という意図は同じなので、集約した方が成果が出やすくなります。
また以下のような表記ゆれのチェックも重要です。
- ひらがな / カタカナ
- 全角 / 半角
- 同義語
- 誤字を含む想定クエリ
キーワードプランナーや実際の検索クエリを確認しながら整理しましょう。
除外キーワードを必ず設定する(ムダクリックの防止)
除外キーワードとは、表示したくない検索語句をあらかじめ弾く設定のことです。
これを適切に設定しないと、コンバージョンに繋がらないユーザーに広告費が消費されてしまいます。
例(※新しい例に変更済み)
家具通販サイトが広告を出す場合、
- 「ソファ 修理」
- 「家具 処分」
- 「テーブル 引き取り」
などのキーワードで広告が出ると、購入意欲のないユーザーのクリックが発生する可能性があります。
これらを除外キーワードに登録しておけば、
CVにつながらないクリックやムダな広告費をカットできます。
除外キーワードは
- 表記ゆれ
- 類義語
- 実際のクエリに出てきたパターン
を踏まえて、定期的に更新することが重要です。
キーワードごとに個別のリンク先URLを設定しなくてよい
昔は「キーワードごとにリンク先URLを設定する」が一般的でしたが、
現在は Google広告・Yahoo!広告ともに 広告単位でのリンク先設定が基本です。
つまり、
- キーワード単位でURLを設定しなくて良い
- 広告グループや広告のレベルで設定すれば十分
- キーワード側は URL 空欄のままで問題なし
という仕組みになっています。
実際、キーワード単位でURLを分けると管理が複雑化し、
データ学習の面でもメリットがほとんどありません。
運用効率の観点からも、
URL設定は広告(または広告グループ)単位に統一しましょう。
広告グループ作成における注意点
アカウント構成を最適化するうえで、広告グループの設計は非常に重要です。
ここでは、広告グループ作成時に必ず押さえておきたい注意点を3つ紹介します。
① マッチタイプごとに広告グループを分けない
キーワードのマッチタイプ(完全一致・フレーズ一致・部分一致)ごとに広告グループを分割してしまうケースがありますが、現在のGoogle広告では推奨されていません。
理由は次の通りです。
- データが分散し、学習スピードが遅くなる
- 広告グループが増えすぎて管理が煩雑になる
- 予算が細かく割れ、配信が安定しなくなる
特に自動入札を活用する現在の広告運用では、
データ集約=成果の出やすさ
につながります。
そのため、マッチタイプの違いは同一広告グループの中で管理し、
広告グループを不必要に分割しないことが重要です。
② 広告グループごとに適切な広告文を設定する
広告グループは「検索意図ごとにまとめる」ことが基本です。
そのため、広告文もグループのテーマに合わせた内容にする必要があります。
広告グループごとに広告文を変えるメリット
- キーワードとの関連性が高まり、広告の品質スコアが向上
- クリック率(CTR)が改善しやすい
- 自動入札の学習が進み、配信の精度が高まる
- “検索意図に合わない広告文が表示される”ミスマッチを防げる
逆に、複数の広告グループで同一の広告文を使いまわすと、
ユーザーの検索意図にフィットせず成果が出にくくなる可能性があります。
もし同一広告文で問題ない場合は広告グループ自体をまとめる判断も必要です。
その方がデータ集約が進み、機械学習に有利になるケースが多いためです。
③ 1つの広告グループに複数のキーワードを設定する
「1グループ1キーワード」で細かく分ける方法は、
過去にはよく使われていましたが、現在の運用ではメリットが少ないどころか逆効果です。
1キーワード=1広告グループが非推奨な理由
- 広告グループが増え、管理が著しく複雑化
- データが極端に分散し、自動入札の学習が遅れる
- 予算が分散し、配信量が不足しやすい
- 意図が同じキーワードまで別管理になり、最適化しにくい
現在のGoogle広告では
「検索意図が同じキーワードをまとめる」=最適化しやすい
というアルゴリズム上のメリットがあります。
そのため、
- 同じテーマ
- 同じニーズ
- 似た検索意図
を持つキーワードは、1つの広告グループに複数まとめるのが基本です。
キャンペーンの設定における注意点
キャンペーンを適切に設定することは、アカウント構成全体の精度を高めるうえで欠かせません。ここでは、設定時に必ず意識したい3つの注意点を解説します。
① 商品・サービスごとにキャンペーンを分けない
複数の商品やサービスを展開している場合、「商材ごとにキャンペーンを分ける」構成を採用しがちですが、現在のGoogle広告の仕様ではおすすめできません。
商品単位でキャンペーンを分けてしまうと、
- データが分散して学習が進みにくい
- キャンペーン数が増え、管理工数が大幅に増える
- 予算が細分化され、配信が安定しない
といった問題が発生します。
そのため、同じターゲットに訴求する商材であれば1つのキャンペーンにまとめる方が効率的です。データが集約されることで学習スピードが上がり、成果改善のスピードも早くなります。
ただし、以下のように「配信条件が大きく異なる場合」はキャンペーンを分けるべきです。
- 予算を完全に分けたい
- 配信地域が異なる
- 配信時間帯を変えたい
- 使う入札戦略を変えたい
これは、戦略上の意図を正しく反映するために必要な分割です。
② デバイスごとにキャンペーンを分けない
スマホ・PC・タブレットなど、配信デバイスごとにキャンペーンを分ける必要もありません。
デバイス別に分割すると、
- 予算が分散して機械学習が進まない
- 最適化がデバイス単位で独立し、効率が落ちる
- 管理の手間が倍増する
というデメリットが大きくなります。
現在のGoogle広告では、1つのキャンペーンに複数デバイスを含めた方が、アルゴリズムが柔軟に最適化できるため、成果が安定しやすくなります。
むしろ、デバイス別に成果が大きく異なる場合は、
- デバイスの入札調整(入札比率の変更)
で対応するのが正しい方法です。
③ Hagakure(ハガクレ)構造を意識して“シンプルにまとめる”
Googleが推奨するアカウント構造「Hagakure(ハガクレ)」では、
・分割しすぎない
・データをなるべく1つの箱に集める
・学習を加速させる
という考え方が基本となっています。
キャンペーンを細かく分けすぎると、
どれだけ丁寧に運用しても 機械学習の効率が落ち、成果が伸びにくくなります。
そのため、キャンペーン設計時は
- 予算
- 入札戦略
- 配信地域
- 目的
といった「構造上どうしても分けるべき条件」以外では、むやみにキャンペーンを増やさないことが重要です。
リスティング広告のアカウント構成を媒体推奨のHagakureで作るべき理由
ここでは、より理想的なアカウント構成を知りたい方向けに、Googleが正式に推奨しているアカウント構造「Hagakure」を採用すべき理由を解説します。
3章の作り方を理解するうえで必須ではありませんが、原理原則を理解しておくことで応用が利き、プロレベルの運用精度を実現できる ため、深く理解しておく価値があります。
なお、Google広告を基準にした考え方ですが、Yahoo!広告・Microsoft広告でも挙動はほぼ同じです。
Hagakureとは何か?
Hagakureを端的にいうと、
「可能な限りアカウント構造をシンプルにし、データを集約させる考え方」
です。
この構造を採用することで得られる主なメリットは次の2つです。
- データ集約によるPDCAのスピード向上
- 自動入札戦略(tCPA / tROAS)が正しく機能しやすくなる
データがばらけたアカウントでは、機械学習が学習に必要なデータを集められず、成果の出る配信に辿り着くまで時間がかかってしまいます。一方、Hagakureのように構造がシンプルでデータがまとまっていると、学習が早く、成果の立ち上がりが速くなります。
なぜ “シンプル構造” が求められるようになったのか
2016年頃までは、自動入札の制度が今ほど成熟しておらず、広告運用者が手動で入札価格を細かく設定し、広告グループを細かく分割する運用が主流でした。
しかし、機械学習の急速な発達により、
「人間が細かく調整するより、機械に任せた方がCVに繋がりやすいユーザーを見つけられる」
という状況に変わりました。
ただし、機械が正しく判断するためには、その判断材料となるデータが必要です。
データが細かく分散しているアカウントでは学習が進まないため、Googleは以下のような考え方を推奨しています。
“アカウントは極力シンプルにし、データをまとめて学習させるべき”
これがHagakure構造の根幹です。
ただし、すべての商材で完全にHagakureが正解とは限らない
筆者自身も基本的にはHagakureをベースにアカウント構成を作りますが、商材によっては例外もあります。
例えば、
- 部分一致キーワードの入札単価が高い
- クエリがブレやすい商材
- 意図しない検索語句が多く混ざりやすい市場
こうした場合は、部分一致だけ広告グループを分けて入札単価を下げ、いわゆる「薄く流す」構造の方がパフォーマンスが安定するケースもあります。
つまり、
“基本はHagakure、しかし商材特性に応じて柔軟にアレンジする”
という視点が実務上は重要です。
「守破離」で考えるのが理想
Hagakureは広告媒体が推奨する“守るべき型”です。
まずはこの型を忠実に理解し、正しく運用することで最短で成果を出しやすくなります。
- 守:まずはHagakureの型どおり設計する
- 破:商材や配信データに応じて改善点を見つける
- 離:型を応用し、独自の最適解を作る
筆者はこの考え方こそが、長期的に強いアカウントを作る鍵だと考えています。
Hagakure構造の詳細や具体例は、別記事でより深く解説する予定ですので、そちらも参考にしてみてください。
業種別リスティング広告のアカウント構成例
ここでは、よくご依頼をいただく業種の中から、代表的な3業種のアカウント構成例を紹介します。
実際には企業の強み・提供サービスの幅・エリア戦略によって最適解は変わりますが、初期構築の参考になるはずです。
指名層は割愛します。
もし「自社の場合はどう作ればいいのか」気になる方はお問い合わせください。
これまで100業種以上を運用してきた経験から、できる限り具体的にお答えします。
法律相談(弁護士事務所)
| ターゲット層 | 説明 | 検索語句例 |
|---|---|---|
| 顕在層 | すでに法律相談を検討している人 | 法律相談 エリア名、離婚相談 弁護士、交通事故 慰謝料 弁護士など |
| 潜在層 | 悩みはあるが弁護士への依頼を迷っている人 | 離婚 方法、交通事故 保険対応、相続 手続き 流れなど |
弁護士系では、顕在層のCVRが非常に高いのが特徴です。
実務経験としても、
- 「法律相談 × エリア名」
- 「悩み内容 × 弁護士」
の掛け合わせが最もCVに近く、クリック単価とCPAのバランスが優秀でした。
潜在層はアクセスは集まるものの、相談・来所につながりにくく費用対効果が悪化しやすいため、顕在層中心のキャンペーン設計をおすすめします。
ハウスクリーニング
| ターゲット層 | 説明 | 検索語句例 |
|---|---|---|
| 顕在層 | クリーニングを依頼したい人 | ハウスクリーニング エリア名、エアコンクリーニング 安い、浴室クリーニング 専門など |
| 潜在層 | 掃除に困っているが依頼までは考えていない人 | 掃除 手順、エアコン 自分で掃除、風呂 カビ 落とし方など |
ハウスクリーニングは10社以上運用しましたが、
「サービス名 × エリア名」 が圧倒的にCVRが高い傾向でした。
さらに、ユーザーは“価格感”を重視しやすいため、
- 安い
- 料金
- 見積もり
といったキーワードを顕在層キャンペーンに必ず組み込みましょう。
注意点として、ハウスクリーニングは作業内容によって客単価が大きく異なるため、CPAだけで良し悪しを判断しないことが重要です。
代理店側は、商材ごとの売上ラインをしっかり確認した上で運用する必要があります。
オンライン英会話サービス
| ターゲット層 | 説明 | 検索語句例 |
|---|---|---|
| 顕在層 | オンライン英会話の利用を検討している人 | オンライン英会話 比較、英会話 エリア名、英会話 月額 安い、競合サービス名など |
| 潜在層 | 英語を学びたいが方法を探している人 | 英語 勉強法、TOEIC 勉強、英会話 初心者など |
オンライン英会話は顕在層と潜在層の差が非常に大きい業種です。
潜在層はリーチは広がりますが、資料請求や会員登録につながる確率は低く、費用対効果が合わないケースが多いため注意が必要です。
顕在層では、
- 比較
- 料金
- 無料体験
などのキーワードが安定してCVを生みやすい傾向があります。
店舗型と異なり来店が不要なためCV単価を抑えやすく、
顕在層をしっかり取り切った上で、動画広告やSNS広告で潜在層を育成するという組み合わせも効果的です。
リスティング広告のアカウント構成に関してよく聞かれる質問とその回答
最後に、アカウント構成について広告運用の教育中メンバーやクライアントからよくいただく質問と、その回答をまとめました。これから構成を組む方は、ぜひ参考にしてください。
Q1. Yahoo!広告とGoogle広告は、同じアカウント構成で問題ありませんか?
A. 基本的には同じ構成で問題ありません。
ただし、Yahoo!広告はGoogleよりも「部分一致の広がりが大きい傾向」があるため、
検索意図がぶれてクリックが荒れやすい場合は、Googleよりも絞って構成するケースがあります。
とはいえ原則としては、同じ構成ルールで管理すれば十分機能します。
Q2. キャンペーン名・広告グループ名はどのように付けるべきですか?
A. 管理しやすさを最優先にシンプルな命名を推奨します。
- キャンペーン名
→ ユーザーの検討度別に
例:「顕在_エリア」「潜在_情報収集」 - 広告グループ名
→ テーマ名(商品カテゴリ・サービス内容など)
また、管理しやすいように
A_キャンペーン名 / B_キャンペーン名
のようにナンバリングしておくと、重要度順に並び替えができて便利です。
Q3. キャンペーンはどのような場合に分けるべきですか?
A. 下記のように“戦略上分ける必然性がある”ときのみ分割します。
- 検討度が異なるキーワードを扱う場合
- 配信地域が異なる場合
- 予算を完全に分けたい場合
- 入札戦略を変える必要がある場合
むやみにキャンペーンを増やすと
予算が分散 → 学習しない → 効果が伸びない
という悪循環に陥るため、構成はシンプルに保つことが重要です。
Q4. 広告グループはどのようなときに分けるべきですか?
A. “テーマが異なるキーワード” を配信する場合に分けます。
例:果物通販の場合
- りんご
- ぶどう
- メロン
これらは検索意図が異なるため、広告グループを分けるべきです。
理由はシンプルで、
- テーマに合わせた広告文を表示できる
- CTR・CVRが上がりやすい
- 品質スコアが改善される
からです。
「りんご 通販」で検索した人に「ぶどうの通販」の広告を見せても刺さらないため、
検索意図に合わせてグルーピングすることが重要です。
Q5. 広告は広告グループ内にいくつ作るべきですか?
A. 基本は1つで十分です。
最大3つまで作成できますが、複数用意すると
- データが分散して学習が遅れる
- 最適な見出し・説明文が定まりにくい
というデメリットが生じます。
ただし例外として、
ターゲットが明確に2種類以上存在する場合(例:個人 / 法人) は広告を分けて作成する方が効果的です。
Q6. キーワードはいくつ設定すべきですか?
A. 数にはこだわらず、“CVにつながるキーワード” に集中すべきです。
キーワードを増やす=成果が出る
ではありません。
むしろ、
- データが散る
- CPAが悪化する
- 予算が分散する
と逆効果になるケースが多いです。
例:都内の分譲マンションが商材で、予算が100万円
→ 「分譲マンション × エリア名」だけに絞った方がCPA改善しやすいこともある
限られた予算をどこに集中させるべきかを最優先で考えるべきです。
リスティング広告なら ArchRise
指名キーワードや一般名詞を活用したリスティング広告運用は、広告効果や予算効率に大きく差が出る分野です。 ArchRiseでは、以下のようなサポートを通じて、貴社の広告運用を成功に導きます:
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- 広告文・表示オプション・入札戦略の設計によるクリック単価・コンバージョン単価の改善
- 検索順位変動など外部要因に影響されない出稿構造の構築
「指名検索で広告を出すべきか迷っている」「SEOで上位を取れているが機会損失を防ぎたい」「広告運用の効率を更に改善したい」そんなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度 ArchRise までご相談ください。
経験豊富な広告運用コンサルタントが、貴社の状況をヒアリングした上で、最適な戦略を設計・実行いたします。
まとめ
本記事では、指名キーワードおよび指名検索におけるリスティング広告の意義・メリット・運用のポイントについて解説してきました。主な内容は以下の通りです:
- 指名キーワードとは、自社の社名・ブランド名・サービス名など、特定企業を想起させる固有のキーワードであること
- 指名検索を行うユーザーは、一般名詞検索ユーザーに比べて意欲・状況が異なり、広告出稿でも有利な傾向があること
- 指名検索におけるリスティング広告の役割として「検索結果の占有」「誤流入防止」「競合広告による機会損失回避」「アルゴリズム変動リスクの軽減」があること
- 運用時の具体的なポイントとして、広告文・説明文に訴求を盛り込む、広告表示オプションの活用、キーワード範囲の整理・除外設定といった設計が重要であること
- キャンペーン構成では、指名キーワードと一般キーワードを分離して管理することで、予算配分・効果測定を適切に行えること
指名検索は「既に自社を認知しており、購買や問い合わせに近い段階のユーザー」が対象となるため、適切に運用すれば非常に高い効果を期待できます。一方で、広告出稿を行わないことで貴重な機会を失うリスクも存在します。
だからこそ、戦略的に配信設計を行い、コストパフォーマンスを最大化することが求められます。
貴社が次のステップとして「指名検索でのリスティング広告出稿」に踏み出す際、本記事がその意思決定の一助となれば幸いです。
ぜひ、戦略設計・運用の実行において迷われた際は、一度 ArchRise までお問い合わせください。

